齋藤 樹里(文学部国文学科助教)
(日本近現代文学)
『見立てと女語りの日本近代文学—斎藤緑雨と太宰治を読むー』
出版社:文学通信(2025年2月)
日本の近代文学テクストを「芝居」と「女性」という2つのキーワードを中心に据えて論じる。
主として斎藤緑雨と太宰治という二人の近代文学者に焦点を当て、同時代の言説や同時代の社会文化状況、当時既に成立していた文学や芝居のような先行テクストを足掛かりに、小説テクストの分析を行う。
1つ目のキーワードは「芝居」。その大衆性ゆえに、題材として、引用として、描写の一部として、近代文学のなかで重要な役割を占め続けた。その知識を研究の俎上に載せることで、テクストを今一度読み替える。特に「見立て」という「芝居」的な観点から近代文学を捉えると何がわかるのか?「芝居」と〈近代批評〉を接続する。
2つ目のキーワードは「女性」である。太宰治の「女語り」、いわゆる〈女性独白体〉における「女性」とは何かを考える。性別を二分することの必然性が突き崩されているいま、近代文学のテクストはどう読んでいくとよいのか。
■著者より
博士論文をまとめたはじめての単著です。「芝居」と「女性」という観点から物語を捉え直すことで、既存の物語解釈を大きく読み替えられるのではないかという問題提起から始まった一冊です。多くの方々に手に取っていただけたら嬉しく思います。
■目次
序章 近代文学の「芝居」と「女性」—「見立て」と「女語り」の観点から—
第一章 近代とは何か—明治二十年代と「芝居」—
第二章 太宰治の「女語り」①—構築される「女性」—
第三章 太宰治の「女語り」②—「芝居」の中の「女性」—
附章 コリア語からの視点—翻訳と物語—
終章 「芝居」と「女性」、その接点について—「見立て」られる「女語り」—